ハンリーラ 2008/10/21 (Tue)

ドメラ図鑑 006　ハンリーラ


名前：ハンリーラ（Hanliela）
主食：日光

◆悲しみの涙、ハンリーラ

　たとえば、あなたが友達とケンカして、腹立ちながらもなんとなく落ち込んだ気持ちで家路に着くとき。
　たとえば、あなたが何を言っても理解し合えないであろう人間に出会ったとき。
　たとえば、あなたが自分のパソコンの上に熱々のブラックコーヒーを盛大にぶちまけたとき。

　そこには、必ずといっていいほどハンリーラが存在する。


◆抽象的生物

　ハンリーラはいわゆる「抽象的生物」である。我々はハンリーラの個体のそれぞれを実体験として知覚することは出来ないが、この世界にハンリーラという生物種が存在すると仮定したとき、その総合的・抽象的存在としてのハンリーラは実在するのである。逆に言えば、その抽象的存在のハンリーラが実在する以上、おのおののハンリーラも存在するはずであるから、虫眼鏡でも携えて野山を歩いていればいつか偶然出会えるかもしれない。その可能性は大いにありうる。

　分かりにくいので噛み砕いて書くと、例えばコップという概念は実在するものの、コップ自体がどこにも発見されていないということと同じである。コップのような無生物であれば概念に基づいて作成することも可能であろうが、ハンリーラは生物であるのでそうもいかない。


◆ハンリーラの生態

　ハンリーラは、朝になると活動を開始し、夜になると眠りに就く。人間の生活とほぼ同じサイクルで一日を過ごす。
　食事は1日1回で、正午を過ぎる頃に日光を吸収し、十分に吸収したあと居眠りをする。活動範囲はとてつもなく広く、とりあえず地球上だけに限っても、1秒間でたどり着けない場所は無い。
　天敵はイモムシ、プテラノドン、それに声のでかい映画監督などである。
　感情が豊かで、喜怒哀楽に応じて頭部の「感情体」（画像の黄色い部分である）の色が変化する。「喜」で薄黄色、「怒」で山吹色、「哀」で浅黄色、「楽」でレモンイエローに変化するといわれているが、もちろんこれは大雑把過ぎるくくりであるし、ハンリーラの感情の多様さは我々のそれの7万倍とも言われているので、以上の紹介程度でとどめておく（ハンリーラは、「昨日の夕食がカレーライスだったのに今日の夕食もカレーライスだった」、「昨日の夕食がライスカレーだったのに今日の夕食もカレーライスだった」、「昨日の夕食がカレーライスだったのに今日の夕食もライスカレーだった」、「昨日の夕食もライスカレーだったのに今日の夕食もライスカレーだった」の4種類においても異なる感情を表す）。


◆ハンリーラと走悲性

　さて、ハンリーラは上で挙げたとおり、人が悲しい思いをしたとき、必ずその近くにハンリーラが存在するということで知られている。ハンリーラには悲しみの感情を敏感に感じ取る能力があり、そして引き寄せられる性質があるのである。これを「正の走悲性」と呼ぶ。

　悲しみの感情に寄ってくるからには、ハンリーラにはそうするメリットがあるはずだが、現在の研究では未だに明らかにされていない。
　「ハンリーラ」がもともと「美しい」という意味であることから、「悲しみの近くに寄ってくるのは、悲しんでいる人を慰めるという心美しい行動のためではないか」と安易に推測するグループもある。


◆架空の生物

　ハンリーラを架空の生物として扱う文献・論文も実は存在する。ハンリーラを伝説上の存在とする見方である。
　しかし大多数の人は、「犬」や「猫」や「パンダ」という概念と全く差異無く「ハンリーラ」という概念も信用しているため、そのような文献や論文は、よっぽどの変人が書いたのであろう、という見方をされることが大半である。
　「犬」や「猫」や「パンダ」が架空の生物だとする文献などフィクションである。そのことを考えればお分かりいただけるだろう。