オヨ呉 2008/10/18 (Sat)

ドメラ図鑑005　オヨ呉（Oyogo）


名前：オヨ呉（Oyogo）
主食：魔力

◆オヨ呉と魔界

　魔界の存在を信じない者は多い。恐らく、停電中にろうそくを立てて麻雀を打ったことのある人よりも、多いだろう。だが、魔界は実在するのだ。
　ドメラ図鑑には、この星に存在する（或いは「存在した」）、珍妙な、しかし愛すべきなぞの生物がわんさか載っているが、その中には、魔界由来の生物も少なくない。魔界とこちらの世界は、実は環境が似通っているせいもあり、とても繋がりやすくできている。もともとは別次元の魔界だが（こちらの世界で引き始めた直線は、絶対に魔界の紙に続けて書く事が出来ない）、しかしある種の空間の「省略」、或いは「欠如」、また或いは「重複」によって、唐突にリンクしてしまうこともあるのである。例えば、一回の半荘で役満役が頻出したという経験は無いだろうか。そんな時は、かなり高い確率で空間が魔界とリンクしている。

　オヨ呉はそんな魔界の代表的な動物だ。気が弱く、非常にせこい。そして、プライドが高いくせに実際のところ特に何も得意なことはない。毎日大好きな他人の魔力をむさぼって、どうにか生きながらえている。今流行りの言い方をすれば、魔界の「ニート」に他ならない。魔界では、「オヨ呉」という悪口が存在するほどである。「馬鹿」や「怠け者」における、馬、鹿、ナマケモノが実は馬鹿でも怠け者でもないのとは異なり、オヨ呉の場合はその様態、性質が伴っているあたり、オヨ呉という悪口がどれほどの暴言であるかは、察していただきたい。


◆仮面

　オヨ呉の外見的特徴は、なんと言ってもその仮面である。一部のごく僅かな例外を除いて、全てのオヨ呉は仮面をつけている。図のオヨ呉は、段ボールで作った仮面に糸を通して装着しているが、これにもバリエーションがあり、大きなフキの葉っぱを使うオヨ呉、画用紙を使うオヨ呉、スーパーの買い物袋をかぶるオヨ呉、恥ずかしげもなくパンストをかぶるオヨ呉などもいる。数え切れないほどのバリエーションが存在するが、どれにも共通して言えることは、「安上がり」であることである。先ほども述べたが、オヨ呉はぐうたらなので、高級なものは買えないのだ。

　さて肝心な、オヨ呉が仮面をかぶる理由だが、今のところ分かっていない。研究者によれば、「自分を恥じるため」、「自堕落な生活を送ることへの免罪符として」、「他人から魔力を奪う際に、身元がばれないように」、「単にかっこいいと思っているから」などという説が有力だそうだが、いずれにせよ、大した理由ではない。


◆こちらの世界とオヨ呉

　しかし、魔界から偶然こちらの世界へやってきたオヨ呉にはある特徴的な変化が見られるという。オヨ呉がアルバイトを始めるのである。
これについてはかなり有力な見方がある。

(1)魔界とこちらの世界のアルバイトでは待遇が雲泥の差だということ
(2)魔力を有する生物がほとんど存在せず食に困るため
(3)見知らぬ土地で独りぼっちになってしまった不安を解消するため
 

　(1)魔界のアルバイトは肉体的にも精神的にもきついものが多い。例えば、「小便器の中で尿の標的になるアルバイト」、「混ざってしまった塩と砂糖を手作業で選り分けるアルバイト」、「上司のお説教を24時間聞き続けるだけのアルバイト」、「部下にお説教を24時間し続けるだけのアルバイト」などで、時給はそれぞれ70000グニブ、35000グニブ、80000グニブ、90000グニブであり、日本円に換算するといずれもおよそ5円弱である（魔界の通貨は、桁数が変わらないと価値も変わらないため、10000グニブ～99999グニブはいずれも等価なのである）。

　(2)もちろんこちらの世界には、魔力を持つ生物はほとんど居ない。一部のショウリョウバッタや、ナメクジに魔力を持つ個体が存在するが、そうはいってもごく僅かである。また、どの生物についても時たま恐るべき魔力を持って生まれてくるものが居る場合があるが、それはたいてい魔界とのリンクが関わっていると思われる。

　(3)たった一人で見知らぬ土地に放り出されたら、誰でもまずつながりを求める。怠け者のオヨ呉でもそうだ。アルバイトをすることによって、自分の居場所を見つけようとするのである。

　オヨ呉はそういう意味で、今現在爆発的に増え続けるニート対策のモデルとして注目されている。