ブンダすけ 2008/10/12 (Sun)

ドメラ図鑑002　「ブンダすけ」


名前：ブンダすけ
主食：にぼし

　愛くるしい見た目と、触れたものを恍惚へと誘う肌触り、そして脳幹に直接響き渡るかのような甘い鳴き声で、ブンダすけはあらゆる人を魅了する。 太古の数学者ヘルツマンの手記にもその描写が遺されているように──『「天国の凝縮」と言い切ることが出来る唯一の生命』と彼は遺す──はるか昔から広く 愛玩されてきた。
 　
しかし今日では、ブンダすけをおおっぴらに飼うことは出来なくなっている。
ブンダすけは「生きた麻薬」である、と人は言う。またある人は「悪魔」だという。つまるところそのような大衆の見解の変化による。ブンダすけの魅力にとり憑かれ、息をすることすらままならなくなるほどの中毒に陥る人も少なくなかったのだ。今では、良識を持つとされる人々によってブンダすけは「害獣」のレッテルすら貼られようとしている。

ご理解いただけるかと思うが、ブンダすけは害獣ではない。
ブンダすけは、イノシシのように畑を荒らしたり、野犬のように人に危害を加えたりしない。ブンダすけは攻撃手段を持たないのである。ブンダすけは生き残るために、謙虚に、ただひたすら愛くるしく進化しただけなのだ。いわばそれがブンダすけの最大の武器である。

ブンダすけを「害獣」とするグループは、野良ブンダすけを捕獲し、ガス室で処理していると聞くが、恐らくそれも長くは続かないだろう。生物は危機に瀕して 劇的に進化する。このまま黙って滅ぶわけがないのだ。ブンダすけは今以上に愛らしさを磨き、いずれ全人類は、その愛らしさのあまりブンダすけを殺せなくな る。ブンダすけは目いっぱいに増え続け、もしかしたら人間社会を席巻するようになるかもしれない。

そしてその頃には、世界からは争いというものはなくなっているはずである。