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かそのとり

過疎ってます。

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ジョン「すごい!ちょっと、ゲオルゲ!
    こっち来て!見ろよ、このジュース!すげぇ!

ジョージ「おい、俺はジョージだ。何べん言えばまともに名前呼べるようになるんだ!
    で?ジュースがどうしたって?

ジョン「すごい勢いで膨らんでいるぞ!もうすぐ缶が破裂しそうだ!

ジョージ「おい、危ないぞ!それ爆弾じゃないのか?
    早く逃げたほうがいい!

ジョン「あっはhっはっははっは!なんだこれ!どんどん膨らんでいくぞ!
    ゲオルゲ、ちょっと開けてみろよ!中身どうなってんだよ、これ。

ジョージ「だから俺はジョージだって!
    危ないぞ!早く部屋から出ろ!

ジョン「すげぇ!俺の顔くらいの大きさになってきたぞ!
    ゲオルゲ、早く開けてみろって!賞味期限過ぎるぞ!

ジョージ「お前わざとだろ!俺はジョージだって言ってるだろ!

ジョン「いいや、お前はゲオルゲだ。
    そんなことより早く中身開けて飲んでみろよ!

ゲオルゲ「分かったよ、うるさいな、もう!
    いいか? 爆発しそうだったらすぐ逃げるぞ?

ジョン「うわーっ!こええーっ!

ゲオルゲ「せーのっ、それっ!



 その瞬間、うんかの大群がごとく、缶の内側からどす黒い空気が漏れ出した。ゲオルゲは一瞬にしてその暗黒に飲み込まれ、事態の把握すらできないまま、「ここではない何処か」へと消え去ってしまった。
 ゲオルゲはまだ良いのかもしれない。飲み込まれた彼を見ていたジョンには、不幸にも事態の深刻さを理解しうるだけの時間が与えられてしまった。ジョンの心は一瞬にして凍りついた。しかし不格好にひきつった笑みは、顔面にぴしゃりと張り付き、二度と剥がれようとしない。
 ジョンは後悔した。こんなジュース、買ってこなければよかった。なぜあの時俺は、あの不思議なほど真っ黒な自動販売機に目を止めてしまったんだ。ゲオルゲはどこへ消えた? 恐らくは、もう二度と戻ってこれないような場所へ行ってしまったのだろう。

 ぴくりとも動けないジョンの右腕に、漆黒が絡みつく。何もかも麻痺しているようだ。右肘から先が宇宙のように空っぽになった気がした。あとの順番などはほとんど覚えていない。ジョンは全身を隙間なく暗闇に埋め尽くされた。

 ジョンの質量は、ゼロになった。


 世界が全て暗黒に包まれるまで、時間はそうかからなかった。




 一年後

 地球はすでに存在していない。地球が存在しない以上、「一年」という概念は一切意味をなさないかもしれない。
 ところが、消滅したはずのゲオルゲの意識が、はるか天空を超え、更なる想像の極みから、我々に語りかけ続けている。

「黒いジュースを開けてはいけない」

 時空のカテゴリを異にする、別なる世界の地球人に向かって、ゲオルゲは語りかけ続ける。


「俺の名前はゲオルゲではない、ジョージだ」

 果たして、ジョンには届いているだろうか。



END
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