追い詰められているようで追い詰められていない話 2008/10/11 (Sat)

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もうだめだ。建物は完全に包囲された。
外は化け物どもがうろついている。
こうなってしまっては
俺のやるべきことはただひとつ。
出来る限り情報を残していくことだけだ。

夜になる前に西側のバリケードを補強した。
５日前に助けを呼びに行ったコウィンはまだ帰ってこない。
あいつらに食われたに違いない。

5/30
書庫で本を見つけた。
『わくわくさんのつくってあそぼ』という本だ。
ページをめくるうちに驚愕した。
そこにはあの化け物どもの"設計図"が詳細に記してあった。

化け物の弱点がわかった。
あいつらは紙で出来ているので、水に弱いらしい。
しかし建物の水道は止められている。
なんとかして水を確保しなければ。


5/31
２階の見張りを務めているヘヴィンが変死しているのが見つかった。
皮膚がすべて剥がれている。目を覆いたくなった。
２階の窓を慎重に確認したが、バリケードが破られた痕跡はない。
それに外の化け物どもには皮膚を剥ぐ習性などなかったはずだ。
まさか、建物の中に「別の化け物」がいるというのか。

俺たちは全員集まって、作戦会議を行った。
話が過熱して、マフィンがヒステリーを起こしてどこかへ消えた。
追う者はいなかった。


6/1
ウーディンの誕生日だ。
マフィンは姿を見せなかった。


6/2
東側で大きな音がしたので見に行くと、バリケードが破られて、化け物が侵入してきている！
東側から中央ホールにつながる扉を、急いですべて封鎖した。
水はまだ確保できない。急がなくては。


6/3
明け方ごろ、東側の部屋からマフィンの叫び声が聞こえた。
気づかぬうちに隔離してしまったのだ。
冥福を祈った。


6/4
東側が静かになった。
ウーディンが、「俺は超能力を使える。ひっひっひー」と言い出した。
狂ってしまったようだ。自分をフーディンと勘違いしている。
ウーディンには２階の見張りを任せた。


6/5
５月から行方不明になっていたラッフィンが生きていた！
３階の大時計の間に隠れていたらしい。
ひどく消耗しているようだが、正常な精神を保っている。
この建物の中には、より恐ろしい化け物がいると証言している。
ヘヴィンの皮を剥いだやつのことだろうか。


6/6
ウーディンの姿が見えない。
小ホールの隅でモンツィンが血を吐いていた。
極限状況で持病が悪化しているようだ。
外の化け物どもは相変わらず建物の周りをうろついている。
水さえあれば。


6/7
気力が出ず、一日何も口にしなかった。

ウラスィンが「いちかばちか外へ出る」と言って外へ出た。
止めはしなかった。


6/8
１階の西トイレで、ウーディンが見つかった。
へヴィンと同様に皮を剥がれて死んでいた。
化け物は全館をうろつきまわっているようだ。
ラッフィンが青ざめた顔をしている。


6/9
３階の映写室で、コウィンの死体が見つかった！
俺はいやな予感がした。コウィンは助けを呼びに外へ行ったはずだ。
ここに死体があること自体がおかしい！


6/10
ウラスィンが小ホールで死んでいた。皮を剥がれていた。
コウィンのときと同じだ。なぜここに死体があるんだ。
恐ろしい仮説だが、化け物の正体は身近な人物なのではないか。
外へ助けを呼びに行った人物をこっそり追って行き、殺して、連れ帰る。
今まで化け物に遭遇しなかったことも説明がつく。


6/11
モンツィンが書庫で死んでいた。
皮を剥がれていた。俺はおかしくなりそうだ。
もう俺とラッフィンしか残っていない。
犯人はラッフィンだ。あいつが化け物だ。


6/12
ラッフィンの荷物から、大量の水が見つかった。


6/13
ラッフィンが１階のホールで死んでいた。


6/14
なるほど、犯人は俺だったのか。