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かそのとり

過疎ってます。

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 ウルマロさんの案内で、私が最初に訪れた村はピクマロ村というところだった。そこに住むトマロ人はナマラ族であり、第一印象は、「頭の低い人たちだなぁ」というものだった。
誤解しないでいただきたいのは、「頭が低い」というのは慣用句でも比喩でもなんでもなく、文字通りの事実だということである。つまり、頭が人体 の中で非常に低い位置にあるのである。そういえば、クルミア空港ですれ違った何人かのトマロ人は、頭が低い位置にあった。彼らは、ナマラ族だったのだろ う。
ウルマロさんによれば、他にも頭の低い民族があるが、このナマラ族が最も低いということだ。私はこの村に一週間ほど滞在することにした。

 私は、滞在場所として、村で一番の金持ちであるキリセラさんの家に案内された。客人は優しくもてなすのが、ナマラ族の風習らしく、好意を覚え た。キリセラさんの家は、泥を固めたレンガで周囲を広く覆われており、中に入ると日本語で「ようこそ、キリセラ家へ」と書いてあった。感動したものだ。
あてがわれた部屋は、大きな屋敷の最東端の部屋で、6畳ほどだった。壁は泥レンガでできていたが、床には板材が敷かれており、見た目よりも温かい印象だった。
 ふと見ると、部屋の中に興味を引くオブジェがあった。手が8本ほどある泥人形のようなもので、頭が低い位置にあることからナマラ族をかたどったものと思われた。「触れるな」と注意書きがしてあったので、気になったが、そのまま放っておいた。

 1日目は、さっそくキリセラさんに村を案内してもらった。
 キリセラさんは村の中でもかなりの有力者のようで、誰もがキリセラさんより頭を高くしようとした(ナマラ族では、目上の者に対して頭を高くして 敬意を示す。日本でいうお辞儀の逆である)。この風習は、ナマラ族が大地を崇拝しているということに基づくものらしい。つまり、頭が大地により近いほう が、偉いのである。人々は、「自分の頭よりも相手の頭のほうが大地に近いですよ」ということを示して敬意の表現、礼儀とするのである。
 そうしてしばらく村を歩いているうちに、妙な変化に気がついた。キリセラさんの歩幅が、徐々に広くなっているのである。
 確かキリセラ家を出た時にはキリセラさんは歩幅をにわかには信じられないほど小さく取って歩いていた。しかし今では私の5歩分を1歩で歩いている。
 私は現地ガイドのウルマロさんを通じて、キリセラさんに尋ねた。
「どうして歩幅が広くなっているんですか」
 彼は答えた。
「歩幅は一定だよ、何も変わっていないよ、どうしたんだい?」
 なんと、歩幅は変わっていないという。いったいどうしたことだろう。
 それはその日の夜、キリセラさんの書庫にあった文献によって明らかになった。文献によれば、ナマラ族では1グルミ(日本でいう82秒)ごとに、 長さの単位が変化していくのだそうだ。ナマラ族で用いられる長さの単位はジレミ法であるが、1ジレミの基準が1グルミごとに変化するのである。キリセラさ んは自分の歩幅を常に一定にしようとしてあのような歩き方になっていたわけだ。
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